東京地方裁判所 昭和25年(ワ)6728号 判決
原告 来次六雄
被告 丸藤金治 外二名
一、主 文
被告等は連帯して原告に対し金二十三万円及びこれに対する昭和二十五年六月一日以降支払済に至るまで年一割の割合による金員をそれぞれ支払え。
被告丸藤年美は別紙物件目録<省略>記載の建物につき被告丸藤金治の原告に対する金二十三万円、弁済期昭和二十五年十一月三十日、利息年一割(各月分前月末日払)期限後損害金年一割とする昭和二十四年十一月三十日附貸金契約による債務及びこれに対する被告丸藤年美の連帯保証債務をそれぞれ担保するための抵当権設定登記手続をせよ。
訴訟費用は被告等の連帯負担とする。
この判決は第一項に限り、原告において金八万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は、主文第一、二、三項同旨の判決並びに第一項について仮執行の宣言を求め、請求の原因として次のとおり述べた。
被告丸藤金治は、昭和二十四年十一月三十日原告より金二十三万円を、弁済期昭和二十五年十一月三十日、利息月一割(各月分をその前月末日払)、期限後の遅延損害金月一割の約定で借受け、被告丸藤年美同荒井利作は、同日右債務を連帯保証し、かつ被告丸藤年美は、同日自己の所有にかかる別紙物件目録記載の建物に、被告丸藤金治の右主たる債務及び自己の連帯保証債務を担保するため、抵当権を設定し、その登記手続をする旨を約した。その後原告と被告丸藤金治との間で昭和二十五年二月分以降の利息を月八分に改めたが、原告は同年五月までの利息の支払を受けただけで右約定の弁済期を過ぎるも元金並びに利息や約定損害金の支払を受けていない。そして、被告丸藤年美はその約に反し、前記抵当権設定登記手続をしない。そこで、原告は被告等に対し、前記元金二十三万円及びこれに対する昭和二十五年六月一日から支払済に至るまで、右約定利率を利息制限法所定の利率に引直した年一割の割合による利息及び遅延損害金を連帯して支払い、並びに被告丸藤年美に対し、別紙物件目録記載の建物につき、被告丸藤金治の原告に対する金二十三万円、弁済期昭和二十五年十一月三十日、利息年一割(各月分前月末日払)、期限後損害金年一割の債務及び被告丸藤年美の右債務の連帯保証債務を担保する抵当権設定登記手続を求めるため本訴請求に及んだ。
被告等の主張に対しては、本件の貸借につき原告が被告に現実に引渡した金額はたしかに、金二十万七千円であつた。しかし、これは利息月一割(各月分前月末日払)の前記約定に基いて元金二十三万円から昭和二十四年十一月分利息金二万三千円を差引き残額を引渡したことによるものであるから本件消費貸借は右金二十三万円全額につき成立すると述べ、その余の被告主張事実並びに相殺の抗弁事実は何れも否認すると述べた。<立証省略>
被告等訴訟代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、請求の原因に対する答弁として次のとおり述べた。
被告丸藤金治が原告より金員(その額の点を除く)を原告主張の日借受け、被告荒井利作が右債務を連帯保証したことは認めるが、その余のことは争う。被告丸藤金治の借用した金員は二十万七千円であり、且つ利息の約定はない。そして被告丸藤金治は昭和二十五年五月十三日までに合計金九万六千六百円を支払い弁済しているから残債務は金十一万四百円である。仮りに、右支払いが元金の弁済としてでなく、原告主張のような利息の弁済としてなされたものであるとしても、そもそも、原告は無届で貸金業を営むものにして、本件契約中利息に関する部分は昭和二十五年法律第一七〇号「貸金業等の取締に関する法律」に違反するものであるから無効であり、従つて右金員の支払いは不法原因給付であるところ、その不法の原因は違法なる貸金によつて利得を得んとする原告にのみ存するから、被告は原告に対し、これが返還請求権を有するもので、これと被告の原告に負う債務とを本訴において対当額で相殺する。よつて、何れにしても被告丸藤金治、荒井利作が原告に対する残債務は金十一万四百円であるにすぎない。被告丸藤年美に関する部分はすべて否認する。<立証省略>
三、理 由
原告を債権者、被告丸藤金治を主たる債務者、被告荒井利作を連帯保証人として原告主張の日金銭消費貸借契約が締結されたことは当事者間に争がない。そこで、まず本件契約の内容について審理するに、証人安達謹司の証言、原告本人の供述、被告丸藤金治(但し後記認定に反する部分を除く)の供述、及び被告丸藤年美に関する部分を除き成立に争のない甲第一、二号証によれば、原告が昭和二十四年十一月三十日被告丸藤金治に対し金二十三万円を利息月一割(但し前月末日迄に支払うこと)弁済期一ケ年後たる昭和二十五年十一月三十日期限後の損害金月一割の定めで貸借する合意が成立し貸付金は前払利息を控除して右締結の日及びその三日前に合計金二十万七千円を交付されたことを明認し得る。従つて他に特別の事情のない限り、右消費貸借の内容は前記前払利息の約定の下に金二十三万円全額について成立したものと認めるのが相当である。被告代理人は本件貸借の元金は二十万七千円であり且つ利息の定めはないと主張するが、前記認定に反しこれを認むべき証拠は少しもない。
而して原告が被告丸藤金治より前記の如く前払の利息の外、昭和二十五年一月分の利息として金二万三千円、同年二月分以後は約定利率を月八分に減額して、昭和二十五年五月分までの利息支払を受けたことは原告の自認するところであり、これ等が元金の内に弁済されたとする被告代理人の主張に添う証拠は少しもない。
次にその相殺の抗弁についても、原告が貸金を業とするものであることを認めるに足りる証拠が少しもないから、その他の判断をするまでもなく採用できない。
そこで、被告丸藤年美が被告丸藤金治の本件債務を連帯保証したか、更にまた、右主たる債務及び右連帯保証債務を担保するため抵当権を設定し、その登記手続を約したか否かについて審理するに証人安達謹司、滝口康吉(一、二回)の各証言、原告本人の供述と成立に争いのない甲第四号証(被告丸藤年美の印鑑証明)の印鑑と甲第一、二号証中同被告の名下に押捺してある印影の同一なること及び成立に争いのない甲第七号証を綜合すれば、被告金治はその妻被告年美の代理人として原告との間に右の主張のような連帯保証契約や抵当権設定契約を締結したものであることが推測される。特に訴訟外において被告年美が本件の証人滝口康吉に対し原告より借用金のために本件建物に抵当権が設定されある旨を自認していた事実が証人滝口康吉の証言(一、二回)に徴し認められるのであるから前記推定のあやまりでないことが肯ける。右認定に反する被告丸藤金治、丸藤年美(一、二回)の各供述は信用し難いし、他にこれを覆すに足る証拠もない。
してみると被告荒井利作は、もちろんのこと、被告年美においても被告金治の前記債務に連帯保証人としての責に任ずべくまたさらに被告年美に原告主張の如き抵当権設定の登記に応ずべき義務があるものというの外はない。
従つて、原告が被告等に対し前記認定の義務の履行を求める本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 柳川真佐夫)